竝(並)んだ 鳥かごは 暮六つ 月の 見えぬ夜も 艶やかに 止まぬ霧雨 ぽつり、ぽつりと 傘の下 二人 惹かれあへば やがて 舞ひ散るは 雪となり 重ねた 右手 左手 互ひ 温もり 分け合ふだけ でも 唯々 唯々 愛しくて 巡り巡る 浮世すべてを 白く 塗りつぶした この夜に 「どうかどうかまだ行かないで 」 冬の暖かさを 感じてった 花は 降り續(続)ける 知らん顔 それでも いつかは 終はるもの 交はすくちづけは 假初めでも 二人 その意味 確かめあった 鈍く響く鐘 明六つ 隙間覗くは 雪椿 别れ際 強がり笑った でも涙隠せなくて 「 いつか二人また出會(会)ふでせう 息も凍るこんな雪の日に だからどうかもう泣かないで 」 小指その温もり 預けた 一つ一つ過ぎゆく刻が 繋いだ手ほどいてゆく どうかどうかまだ行かないで 若しも夢ならまだ醒めないで 遠く遠く 思ひを馳せて 紅く 咲き誇るは 戀(恋)心 永遠に永遠に凍てつかぬやうに 今は 雪融けを 待ちわびて