灼熱の砂の嵐が 空を焦がした途を行く こんな悪夢は何処まで続くか 呟きが喉を枯らす 空腹で遂に倒れた 旅人を村に招いて 休みなさいと宿を与えた 優しき老婆 ――盗め 盗め 金も種も あれも これも高く売れる どうせ水は乾く土地さ 涙も命も… さあ 持てるだけの全てを奪って 夜明けを待たずに走り出せ 誰にも裁けるはずのない 明日を生きる罪 砂漠に棲む魔物が嗤った 汚れたその片目に映る 世界はもう濁ったままで 希望の極星も霞む 水場で金貨を数える 盗人に呼びかけたのは 家族とはぐれて一人ぼっち 哀れな子ども ――捨てろ 捨てろ 砂の海へ 進みたくば立ち止まるな 駱駝さえも怯む旅に 途連れは邪魔だ… 嗚呼 理性を天秤へと載せても 心は そう量れやしない 刹那の迷いと気まぐれで 後ろを振り返り 砂漠に棲む魔物の孤独を 己をその姿に重ね 救いの手を差し伸べようと 背中で血を拭った そして 幾千もの光を奪った 男もまた奪われていく 誰にも裁けるはずのない その子が生きる罪 砂漠に棲む魔物が笑った 開かないその目蓋の向こう 世界はまだ綺麗なままで 微かに極星は灯る