エアコンをつけるか迷った夕方 開けた窓に風が迷い込む 視線を移した数秒間  君の視線が私とぶつかる 風の音は弱く響いて  空気が少し張りつめた でも、たったそれだけ  とくになにもなくて 秘密を胸にしまうのは大変だ 二人きりだとその小さな亀裂を指でなぞってしまう イヤフォンから漏れ出る旋律は 私のことを励ますように でもそれもきっと 私の勝手な解釈に違いない 風鈴の音は淡々と  淡々と鳴っていた いつからだろう?   君の ことが羨ましいんだ 不安定な私を 笑い飛ばして  茶化して ねぇ 見えない何か  遠く私の 核心避けて  「まだ届かないで」  願う 胸の奥 「伝わらないのは言葉にしないから」 それを一番知っている はずなのに 私の不安は累乗して膨らむ  形状すら崩れる 溢れ出てしまいそうな感情の名前…… 「あのね、私」 オレンジ色の部屋  君と向かい合う時間  静寂は甘く愛おしい 不思議そうな君と戸惑う私 止まる旋律 時計の針  ほら 制限時間が迫る 原稿用紙が背負った十字  先延ばしになる私の勇気  世界は 距離感だけを差し置いて夏を奏でている 私の中に生まれた欲望は刻まれ  混ざり 文字になる その中に君が居る  そのことを君は多分知らない  知って欲しくない 原稿用紙を書いては消して  一行ずつ進めるようなもどかしさ 濁った頭の空気を入れ換えるように  小さな歌声が反響した それは いつからだろう?   君の ことが羨ましいんだ 不安定な私を  笑い飛ばして  茶化して ねぇ 見えない何か  遠く私の 核心避けて  「まだ届かないで」  願う 胸の奥