「野イチゴを摘むあかずきん~ようこそ、グリム迷宮一座へ~」 「むかしむかし 森の中に囲まれた 小さな家に 赤いずきんのよく似合う 女の……いえ、男の子が住んでいました」 オレはあかずきん 今日もいなせな 赤いずきんで 森へ駆け出した 丸く大きな バスケット持って 誰も知らない 秘密の場所に 「この森は迷いの森 普通の人には 近づけない 理由があるんだ……」 カゴいっぱいに 赤い野いちご 集めて帰ろう 甘い香り乗せ 森のことなら オレにまかせて どんな薄暗い 道もひと走り はるか彼方には 花咲く丘が 旅立ちの日は来る いつの日にか 迷いの森を抜けて 外の世界へ……! 狼なんか 怖くない! メリケンサックで 顎を一撃! オレを怒らせる前に 尻尾を丸め ほらウチに帰れよ! 「今、この村には オレとばあちゃんの2人だけ…… でも大丈夫 寂しくは……ないんだ」 この村で生まれ 暗い森しか 世界を知らない それでもいつの日か 笑顔の可愛い お嫁さん貰って ああ幸せに 暮らしてみたいな ふと振り向けば 花咲く丘が 君に出会いたい いつの日にか こんな狭い 森の世界を抜けて……! 狼なんて 怖くない この拳が 力をくれた 一撃 見舞われる前に 消えるんだな このオレの前から! 「そう、それは わたあめみたいに しぼみやすくて ガラス細工みたいに 壊れやすい幸せ…… 悲劇はほんの一瞬だった…… 助かったのは、まだ小さなオレと 瘦せたばあちゃんだけ。 森に帰る狼の真っ赤な舌…… その奥に、村のみんなが眠ってる!! もう……あの時のオレじゃない。 もう、あんな思いは……」 そう 未来はこれから作るんだ パイのように甘酸っぱく 千年杉のように 強い ずっと壊れない 家を作るんだ 未来のお嫁さん お願い こんな小さな このオレだけど きっと 守って見せるから どうか ずっと傍にいてください その昔 暗い森のある村に 赤いずきんの 男の子がいました オオカミの赤い 返り血の跳ねた 拳をペロリ 舐めて言いました 大きなバスケット 可愛いお嫁さんも すっぽり入る バスケットもって 甘くて弾ける 野いちごのパイを 花咲く丘で 一緖に食べるんだ! 終わり