[01:17.45]生きのこるものはずうずうしく、 [01:33.02]死にゆくものはその清純さを漂(ただよ)わせ [01:48.52]物云いたげな瞳を床にさまよわすだけで、 [02:04.59]親を離れ、兄弟を離れ、 [02:12.28]最初から独りであったもののように死んでゆく。 [02:25.70]... [03:25.00]さて、今日は良いお天気です。 [03:40.00]街の片側は翳(かげ)り、片側は日射しをうけて、あったかい [03:55.16]けざやかにもわびしい秋の午前です。 [04:12.00]空は昨日までの雨に拭(ぬぐ)われて、すがすがしく、 [04:19.01]それは海の方まで続いていることが分ります。 [04:30.38]... [04:46.00]その空をみながら、また街の中をみながら、 [04:57.00]歩いてゆく私はもはや此(こ)の世のことを考えず、 [05:09.02]さりとて死んでいったもののことも考えてはいないのです。 [05:24.52]みたばかりの死に茫然(ぼうぜん)として、 [05:45.18]卑怯(ひきょう)にも似た感情を抱いて私は歩いていたと告白せねばなりません。