蝉も啼かない真夏の午後 秘密基地で内緒話 今日の夜は花火大会 何処から見るか駄弁っていた 君が聞かせる恐い噂 それは「虹色廃墟の神隠し」 入ったら戻って来れやしない 町で一番高い場所 「おどかしたりしないでよね」 「そんなことしたり なんかしないし」 掻き分け進む背高草 妖怪団地が見えて来た ヒグラシが啼き始めて 踏み込んだ摩天楼 ひっそりとした団地の中 屋上の扉目指して はっと気付くと独りぼっち 君を呼んでも返事は無い 遭ってしまった神隠し 「悪戯なら止めてよ」 轟き響いた逢魔時の放送塔 二進も三進も夕闇に消えて ぞろぞろ蠢く暗がり 手招きする奇々怪々 オドロに這い出た 魑魅魍魎の百鬼夜行 彼方も此方も物の怪だらけ ぽろぽろ泣き出す怖がり 君を捜して走ってく 何も見えない常夜の底 果てしなく続く部屋と回廊 君の姿は見当たらない 這い寄る闇から逃げ回る お化けなんて居る筈がなくて 幽霊なんて信じたくなくて だってそうじゃないと 駄目だって 「だって」なんて あれなんでだったっけ 泪目よぎる君の影 駆けて行く彼岸の方 やっと見つけられたのに やっともう一度逢えたのに ちょっと待ってと叫んでも 君に声は届きはしない 必死になって追いかけっこ 「悪い夢なら醒めてよ」 ああそうだ 想い出した 祭り囃子と南風 前にも二人でこうやって 暗がり夜道走ったんだ 忘れてしまいたかったのに 忘れられる訳ないのに 彼方側と此方側 狭間を彷徨っていた 扉の向こう側辿り着いた屋上 君は待ってくれていた 満点の星空 全部想い出しちゃったんだ 堪えた泪溢れていく 君は優しく笑っていた 「あの日」のように 煌めき弾けた虹色の花火 一つ二つ三つ四つ幾つも咲いて キラキラ瞬く輝き君と重ねた掌 心に残った鮮やかな光 五つ六つ七つに眩しく染めて ぽろぽろ泣いてる今際に 君と交わした約束 「どうか消えないで」 「いつも側に居るから」 心に還した魑魅魍魎の百鬼夜行 ぎゅっとずっとこの胸に抱いて ぽろぽろ泣くのは最後に 君の笑顔忘れないよ