[ti:] [ar:] [al:] [00:10.93]そこは暗雲が渦巻く国 [00:13.43]悪い犯罪組織が蠢く(うごめく) [00:16.05]人は安全を求めるけど [00:18.68]もう人類に希望は無い [00:21.50]そこに単純な男がいて [00:23.99]「今日も面倒くさいな」と呟く [00:26.67]彼は人間が羨む力を持っていた [00:31.34] [00:32.55]たまたま行き逢った事故現場で [00:35.28]刺されそうな少女を救った [00:37.90]するとどうだ、目が輝いた。 [00:40.52]「スーパーヒーローだ!」 [00:42.20] [00:43.22]「それいけ、強いヒーローさん!悪いやつらなんてやっつけろ!」 [00:48.01]「そりゃないだろ…お昼時だぞ」 [00:50.68]ぼやきながら駆けだす [00:53.98]いくつもの武器を止め [00:56.03]怪我一つしないで吹っ飛ばす [00:58.62]「おいなんだよ、期待するなよ…」 [01:01.26]溜息が一つ [01:03.85] [01:14.84]そこは暗雲も逃げ出す国 [01:17.29]悪い存在組織も敵わない [01:20.02]酷く強靭(きょうじん)な男がいて [01:22.63]ただ「ヒーロー」をやっていた [01:25.43]しかし怠慢(たいまん)な男のこと [01:27.98]今や強盗なんかじゃ動かない [01:30.55]裏で高額な依頼費すら [01:33.23]受け取っていた [01:35.37] [01:36.58]たまたま請けた事件現場 [01:38.85]か細い犯人にパンチして [01:41.75]痛みで彼は気が付いた [01:44.47]「…力が出ないぞ?」 [01:46.17] [01:47.34]「どうした!?強いヒーローさん!そんなやつらなんてやっつけろ!」 [01:52.41]「いや無理だろ!?」 [01:53.38]訳も解らず怯えながら逃げ出す [01:58.01]『我らが強いヒーローが敵を前に、なんと逃げ出す!?』 [02:02.62]「そりゃ無いだろ勝手に言うなよ…」 [02:05.32]溜息が一つ [02:07.95] [02:09.11]あの日からもう何日 [02:11.63]この部屋にいるんだろう [02:14.34]何もかも失っているくせに [02:19.67]「助けて!」とどこかで [02:22.33]誰かが泣いている声 [02:24.92]聞こえた気がするんだよな [02:29.12] [02:31.36]「僕らの強いヒーローだ!!」 [02:33.40]懐かしい期待感が響く [02:36.38]殴られても、届かなくても [02:38.64]血を流しても、倒れない。 [02:41.56]「そうだよ。強いヒーローさ!」 [02:43.89]握り拳を振り上げろ [02:46.60]悪いやつらを吹っ飛ばしていく [02:49.19]ちょっとチープな「ヒーロー」の話。 [02:53.85]