もう一つの、19世紀ロンドン 街角に立ち花を売る 華やかな女達を 切り裂いた《刃物》(やいば) 彼が言うには 「ボクじゃない! ボクがやったんじゃない!!」“ ──別人格が殺(や)ったと宣う 片面透明鏡(Magic mirror)越しに訊く 和やかな彼女の名は 「海月(ミヅキ)、アイリーン、ノリコ ──多重人格の暫定的な 豪華絢爛(Gorgeous)に飾られた 闇に近い 向かい合った二人の 初老を過ぎた 紳士は手に紳士杖(Stick) 淑女の方は その後ろで黑衣の 男が凜と睨む 「…移民との共存には、ルールがある 「…むしろ、ルールに従わないのは、あなた方のほうだ 「…私たちは、契約を容認していない 「…だから、先日申し上げたでしょう!? 『宣戦布告』だと 嗚呼…平行線を辿る議論 交渉虚しく 光側の勢力(the Light side) vs 闇側の勢力(the Dark side)…戦いは既に始まっている 失意に濡れている 橫顔は誰かと同じ 殺意に揺れている 橫顔は誰かと同じ 吹き荒れる民営化による 《企業経営再構築的解雇》(リストラ)の 憎悪の海を彷徨う小舟に 手を差し伸べたのは 「殺せば?」と言う少年の囁き 民営化が彼を殺すのか? それとも彼が民営化を殺すのか ──そして男は紳士録を手に取った