「あの頃してやった事、全てが 無駄とは思いたくないが、 彼女はもう、 あの物語を賞えてはいない……」 《女の子…天使のような女の子…》(アンジェリナ…アンジェリナ…) 可愛いお姫樣 《女の子…天使のような女の子…》(アンジェリナ…アンジェリナ…) 可哀想なお姫樣 《從者》(ペロ)を連れて 《城下町》(Mercato)へ《お忍び》(おつかい) 姫を狙う 蒼い影の《馬車》(Macchina) 《空》(Cielo)を抱いて 《大地》(La terra)へ《接吻》(くちづけ) 姫を攫う 黑い影の《死神》(Orcus) 彼女を殺そうとしたのは 多額保險金を掛けていた 倒產寸前の町工廠の 經營者たる彼女の父親 ──実の両親だった…… 「──そして、 《天使》(アンジェル)の名を持った《少女》(アンジェリナ)は 《義体》(アンジェリカ)として生まれ變わった……」 『Il principe del regno della pasta~パスタの国の王子樣~』 ──昔々あるところに パスタの国がありました その国にはパスタの大好きな 王子樣がおりました 一人ぼっちの王子は大好きなパスタを 一緒に食べる友達が欲しくて 友達を探す 旅に出たのでした…… 「アンジェリカはよほど俺の作り話を氣に入ったらしく、 会う度にその續きをせがんだ……」 風渡る草原 → 荒ら狂う海原 → 凍てついた雪原 → 冒險の旅は續く… 邪惡な《火竜》(Drago)と 囚われの《お姫樣》(Principessa) 呪われし頂を 火の山を目指した…… 迫り上がる岩壁を→両手で捩じ伏せて 燃え上がる火海を→一足で跳び越えて 迫り來る腐の風に→触れても億さずに 見え來たる頂きに→遂に手を掛けた… ──岩に刺さった伝說のフォークを引き拔いたら その時 天空より巨大な影が舞い降りた…… 囚われの姫を 助けた王子の 冒險を綴った繪本それは ──茨の塔で眠り續ける 《可哀想なお姫樣》(アンジェリカ)の夢…… 「アンジェリカは 一番最初に義体の能力を示したが、 最も初期に義体化された義体だけに、 『藥』の副作用を最初に示したのも彼女だっだ……」 《お姫樣…お姫樣…》(アンジェリカ…アンジェリカ…) 樂しいあの歌も 《お姫樣…お姫樣…》(アンジェリカ…アンジェリカ…) 優しいあの人も 《お姫樣…お姫樣…》(アンジェリカ…アンジェリカ…) 愛しいあの日々も 《お姫樣…お姫樣…》(アンジェリカ…アンジェリカ…) 何れは『忘れ去る』 「──そして、今では、あの子に物語を聞かせることもなくなった。 あの頃してやった事、全てが無駄とは思いたくないが、 彼女はもう、あの物語を賞えてはいない……」 ──パスタの国のお姫樣(La principessa del regno della pasta)