幾度生まれ 人の苦しみを目にしたことか 輪廻の歯車がその身を軋ませ 新たに産声を上げた先で待つのは 新たな苦しみと見知らぬ景色 世界とのつながりを欲し 眺めの良い丘に桜の苗を植えた 行くたび死んで 生まれ落ち 歯車が音を立て いつしか枝先に蕾がひとつ 幹にそっと背中を預け 高なるほど薫る桜色の春の風 目蓋の裏に見た影はとても懐かしく 厩戸に生まれ 言を発し 東方に向かい 手を合わせた 十を聞き分けた 豊聡耳 まだ然らざるを 記した 歯車は錆びついた 動くことはない 千代の眠りについた 安らかに 八千代の夢の終わり 枝垂れ降る桜 骨に徹えるほどに かぐわしい 幻想の郷に目を覚まし 亡霊の少女がたおやかに膝をついた 「あなたに愛された桜は、御身の前に」 とーー