しかし、それが間違いだったことに気付くのに、 それほど時間はかからなかった。 お互いにあまりにも冷静さをかえていた。 あまりにも夢を語りすぎて、 現実から遠ざかっていったのである。 歯車はすぐにも狂い始めた。 そして、突然止まった。 またしても破局が訪れようとしていた。 ある日、僕がふと現実と価値観の問題を口に出した時、 恐らくだが、彼女は一瞬にして、 夢から覚めてしまったのかもしれない。 わたしが子供だからいけないのね、と彼女は言った。 ぼくはあえてそれを否定しなかった。 なぜなら、このままずっと夢を見続けられるはずがない、 というぼくの現実的な考え方が警告を発していたからだった。 そして、今度ゆっくり話し合う必要があるといったぼくの言葉が、 急速に彼女を遠ざけてしまった。 それまで、会えない日でも、 毎日交わしていたメールの内容はおざなりになり、 会って話がしたいというぼくのメールに、彼女は時間がほしいと答えてきた。 話し合う前に時間がほしいというのはどういう意味だ。 話し合ってからの方が、 時間が必要になるんじゃないのか。 一方的と感じた彼女のメールに、ぼくは、 それはお互いに時間が必要になったということなのかな、と返した。 ぼくの精一杯の抵抗だった。 このままでは、話し合う前にぼくたちは駄目になる。 そういう意味を込めたぼくなりの警告を発したつもりだった。 しかし、それ以来、彼女のメールはぷっつりと止んだ。