[ti:] [ar:] [al:] [00:00.43]しかし、それが間違いだったことに気付くのに、 [00:05.73]それほど時間はかからなかった。 [00:09.76]お互いにあまりにも冷静さをかえていた。 [00:13.89]あまりにも夢を語りすぎて、 [00:18.23]現実から遠ざかっていったのである。 [00:23.74]歯車はすぐにも狂い始めた。 [00:27.34]そして、突然止まった。 [00:33.10]またしても破局が訪れようとしていた。 [00:39.24]ある日、僕がふと現実と価値観の問題を口に出した時、 [00:46.76]恐らくだが、彼女は一瞬にして、 [00:51.23]夢から覚めてしまったのかもしれない。 [00:55.65]わたしが子供だからいけないのね、と彼女は言った。 [01:01.20]ぼくはあえてそれを否定しなかった。 [01:04.88]なぜなら、このままずっと夢を見続けられるはずがない、 [01:10.97]というぼくの現実的な考え方が警告を発していたからだった。 [01:18.63]そして、今度ゆっくり話し合う必要があるといったぼくの言葉が、 [01:25.17]急速に彼女を遠ざけてしまった。 [01:30.16]それまで、会えない日でも、 [01:33.17]毎日交わしていたメールの内容はおざなりになり、 [01:37.72]会って話がしたいというぼくのメールに、彼女は時間がほしいと答えてきた。 [01:47.24]話し合う前に時間がほしいというのはどういう意味だ。 [01:52.29]話し合ってからの方が、 [01:54.55]時間が必要になるんじゃないのか。 [01:59.43]一方的と感じた彼女のメールに、ぼくは、 [02:04.28]それはお互いに時間が必要になったということなのかな、と返した。 [02:13.09]ぼくの精一杯の抵抗だった。 [02:17.11]このままでは、話し合う前にぼくたちは駄目になる。 [02:22.52]そういう意味を込めたぼくなりの警告を発したつもりだった。 [02:29.20]しかし、それ以来、彼女のメールはぷっつりと止んだ。