蓮子:「私にとっては、ひも理論の研究も、 秘封倶楽部の活動も、どちらも同じことなのよ」 メリ:「物理学と、オカルトサークルが?」 蓮子:「ええ。知らないことを、知ろうとすること。 封じられた秘密を解き明かすこと。 確かにそれは、メリーの言う通り美しくも残酷なことなのかもしれないわ。 でも、だからこそ......全てを解き明かしたその向こうに、 それでもまだ見ぬ何かがあるんだって、私は信じてるのよ」 メリ:「それは......夢のような、話だわ」 蓮子:「そうね、夢だわ。 だから現実に変えるのよ。 雪はいつか溶けるけれど、綺麗だという想いは残る。 目には見えず、形もないけれど、想いはここにあるもの」 メリ:「その想いすらも、いつかは消えてしまうのだとしても?」 蓮子:「それでもまた雪は降るし、そうしたら新しい想いも生まれるわ。 大晦日は一年の終わりだけど、新しい年の始まりでもある」 メリ:「全てを解き明かしても、そこが終わりじゃなくて始まり、ということね。 蓮子らしいというか......」 蓮子:「私が私らしくあるために、ということよ。 だからこそ私は、秘封倶楽部なんだわ」 メリ:「でも蓮子、貴方のいうことは一つだけ間違ってるわ」 蓮子:「え?」 メリ:「私たち、でしょう? 秘封倶楽部は、二人で一つのオカルトサークルなんだから」 蓮子:「そうね!けど、メリーの方こそレポート大丈夫なの? 来週末、行きたいところがあるんだけど」 メリ:「レポートって何だったかしら。 どこかで聞いたことがあるような ......懐かしい言葉ね。まるで夢のようだわ」 蓮子:「......さては自分のレポートが終わってないから現実逃避に話そらしてたのね!? 道理で人の研究を珍しく聞きたがると思ったわ!」 メリ:「いやだわ蓮子、こんなに雪が綺麗なのにレポートの話をしなくてもいいじゃない」 蓮子:「ちゃんとレポート終わらせて、予定あけておいてよね! 行きたいこともやりたいこともいっぱいあるんだから」 メリ:「私たちにはまだまだ、知らないこともわからないことも、 見ていないこともたくさんある、ということね」 蓮子:「いい話にまとめようとしても無駄よ」 メリ:「私たちらしいじゃない。 私たちが、私たちらしくあるために、今夜もそろそろ行きましょうか」 蓮子:「そうね。のんびりしていたら、クリスマスとお正月と雪解けが一緒にきちゃうもの。 店員さん、お会計お願いしますー」 メリ:「そうして私たちは、今夜も夜の街へと、 まだ見ぬ秘密を探して二人でかけてゆくのでした」 蓮子:「......メリー、誰に言ってるの?」 メリ:「さぁ、まだ見ぬ誰かに向かって、かしら」 蓮子:「変なメリー!」 メリ:「蓮子ほどではないわよ」(蓮子とメリー、くすくすを笑ってフェードアウト)