風(かぜ)が吹(ふ)いて宵(よい)に刻(きざ)む 月(つき)灯(あか)り点(とも)したキャンドル 欠(か)けた声(こえ)が 迷(まよ)い込(こ)んで 鐘(かね)の音(ね)を鳴(な)らす 招(まね)かれざる 無垢(むく)な瞳(ひとみ) 大事(だいじ)な誰(だれ)かに似(に)ていた いつのまにか手(て)の中(なか)で回(まわ)した 空(から)のグラスを飲(の)み干(ほ)す 粉雪(こなゆき) 途切(とぎ)れてしまうまでに 一体(いったい)何(なに)を思(おも)い出(だ)せばいい 朝(あさ)の映(うつ)らないT.V(テレビ)には 白黒(しろくろ)に焼(や)きついたままの群像劇(ぐんぞうげき) ひとりにしないで できれば忘(わす)れないでいて 根拠(こんきょ)もなく信(しん)じていた 叶(かな)うはずの願(ねが)いの証(あかし)を 踊(おど)り疲(つか)れるのもいい 今夜(こんや)は一緒(いっしょ)に四重騒(カルテット) 私(わたし)の名前(なまえ)を呼(よ)んで 届(とど)いて もう少(すこ)しすれば朝(あさ)が来(く)る 風(かぜ)が止(や)んで雲間(くもま)分(わ)かち 月(つき)灯(あか)りの外(はず)れでワルツ ひた隠(かく)したヒロイズムを爪弾(つまび)く竪琴(たてごと) 色違(いろちが)いの帽子(ぼうし)に 溜息(ためいき)重(がさ)ねた午前四時(ごぜんよじ) いつのものか忘(わす)れた 写真(しゃしん)の中(なか)笑(わら)う はじけて 消(き)えてしまわないように この泡(あわ)にも名前(なまえ)をつけよう 君(きみ)が 傍(そば)にいてくれるなら 遠(とお)い昔(むかし)見飽(みあ)きた夢(ゆめ)でも 泣(な)けるだろう 星(ほし)の瞬(まばた)きに 今日(きょう)が明日(あす)に変(かわ)わる頃(ころ) 鬼(きさらぎ)も酔(よ)う心(こころ)の模様(もよう) 深(ふか)く激(はげ)しく奏(かなで)に変(か)えて 通(とお)り過(す)ぎた場所(ばしょ)から 幻(まぼろし)来(き)たりて五重騒(クインテット) もう一度(いちど)胸(むね)に刻(きざ)んで 残(のこ)して 口(くち)ずさむ度(たび) 醒(さ)めてく 私達(わたしたち)のメロディーは 時間(じかん)を閉(と)じ込(こ)めてた 窓(まど)の無(な)いこの部屋(へや)に ずっと 流(なが)れ続(つづ)ける 紅茶(こうちゃ)は 苦(にが)過(す)ぎるくらいがいい 眠(ねむ)りまで忘(わす)れてしまうから ろくに台詞(せりふ)も覚(おぼ)えてない 手探(てさぐ)りで不器用(ぶきよう)なCadette 演(えん)じまそう 君(きみ)が望(のぞ)むなら 幸(しあわ)せの形(かたち)を歌(うた)おう また始(はじ)まる 響(ひび)き止(や)まず 追憶(ついおく)と幻想(げんそ)のアンサンブル 魂(たまし)の音(おと)重(がさ)ねて 今夜(こんや)は皆(みんな)で幽霊楽団(オーケストラ) どこにも いかないでいて ここにいて もう少(すこ)しこのまま 朝(あさ)を待(ま)とう