いくら蟹が上手な床屋でも、毛のない頭をかることはできません。 蟹は、そこで、山へやっていきました。 山には狸が昼寝をしていました。 「もしもし、狸さん。」 狸は目を覚まして、「なんだ。」といいました。 「床屋ですが、ご用はありませんか。」 狸は、いたずらが好きな獣ですから、よくないことを考えました。 「よろしい、かってもろおう。 “ ところで、一つ約束してくれなきゃいけない。 というのは、私の後で、私のお父さんの毛もかってもらいたいのさ。」 「へい、お易いことです。」 そこで、蟹の腕を振るう時がきました。 ちょっきん、ちょっきん、ちょっきん。