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ところが、蟹というものは、あまり大きなものではありません。 |
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蟹と比べたら、狸はとんでもなく大きなものであります。 |
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その上、狸というものは、体中が毛むくじゃらであります。 |
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ですから仕事はなかなかはかどりません。 |
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蟹は口から泡をふいて一生懸命鋏を使いました。 |
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そして三日かかって、やっとのこと仕事は終わりました。 |
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「じゃ、約束だから、私のお父さんの毛もかってくれたまえ。」 |
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「お父さんというのは、どのくらい大きな方ですか。」 |
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「あの山くらいあるかね。」 |
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蟹はめんくらいました。 |
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そんなに大きくては、とても自分一人では、間に合わぬと思いました。 |
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そこで蟹は、自分の子どもたちを皆床屋にしました。 |
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子どもばかりか、孫もひこも、生まれてくる蟹は皆床屋にしました。 |
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それでわたくしたちが道端に見受ける、ほんに小さな蟹でさえも、ちゃんと鋏を持っています。 |