蟹がいろいろ考えたあげく、床屋を始めました。 蟹の考えとしてはおおできでありました。 ところで、蟹は、「床屋という商売は、大変暇なものだな。」と思いました。 と申しますのは、一人もお客さんが来ないからであります。 そこで、蟹の床屋さんは、はさみを持って海端にやっていきました。 そこにはたこが昼寝をしていました。 「もしもし、たこさん。」と蟹は呼び掛けました。 たこは目を覚まして、「なんだ。」といいました。 「床屋ですが、ご用はありませんか。」 「よくご覧よ。私の頭に毛があるかどうか。」 蟹はたこの頭をよく見ました。 なるほど毛は一筋もなく、つるんこでありました。 いくら蟹が上手な床屋でも、毛のない頭をかることはできません。 蟹は、そこで、山へやっていきました。