降りしきる雪を花弁(はなびら)に 通る風は柔(やわ)らかに 集めた春の欠片(かけら)で あるがままに咲き誇(ほこ)れ 佇(ただず)む姿(すかた)に 冬の景色(けしき)は切なく 淡墨色の 花は遠い幻想へ 空色 春色 巡る季節の楼閣(ろうかく) 古くは咲いた 花吹雪も今は消え 我が身果ててなお留まるのは 忘らるる厭離の記憶 産まれ生きて散るように 咲いて散る花の定め 黄泉へ誘うこの花も 目覚め開け狂い咲け 舞い散る一片 指に触れる桜色 無限の終わり 動き始める幽明 消えゆく世界は 自身の求む風景 止めど進む 終わり無き中有の旅 咎を背負う花に宿るのは 思い出す欣求の記憶 望月照らす桜の下 なけなしの春を集め 夢にも見た記憶は 見る事の無い満開 咲けど散れど美しく 儚い春の亡霊 群れる蝶の舞う音は 春の終わりを告げる声 降りしきる花は葉桜に 吹き抜けるはあゆの風 散り果てた桜の木に 皐月過ぎ思い馳せる