早苗:神奈子様!諏訪子様! 神奈子:おい、早苗!こっちだよ! 早苗:ああ、神奈子様!園側にいらしたんですね。 諏訪子:私もいるよ! 早苗:諏訪子様も一緒にいらしたなら、ちょうどよかった。 神奈子:うん、不思議な香りがするね。お茶を入れてくれたのかな。 早苗:はい。滅多にないお茶が手に入りましたから、ぜひお二人にと思たんです。 諏訪子:ええ?どれどれ? 早苗:福寿草煎じたものということ…… 諏訪子:ケケ!苦い!ケケ! 神奈子:それはまた滅多なものだな。 早苗:はい。紅魔館のメイドの方から頂いました。強心作用があるから、血の気の追うそうな二人に合うのではっと。 諏訪子:ええ、そ、そうか?あの吸血鬼のメイドめ! 神奈子:早苗はまだ飲んでないんだね。 早苗:はい。私は健康なので、ぜひお二人にっと。黄色のかわいい花でしたから、お二人にも幸せを運んでくれそうと思ったんです。 諏訪子:そ、それは…… 神奈子:なるほど。私にはかなり苦そうだよ。砂糖を持ってきてくれるのかな? 早苗:ああ、分かりました。 諏訪子:私も砂糖大量にお願い! 早苗:はぁい! 諏訪子:福寿草って、強い薬にもあるけど、基本的に毒ですよ。 神奈子:ああ、薬の専門家が扱う限りは、完全に毒だろうね。 諏訪子:早苗ってば、あのメイドに騙されたのかな? 神奈子:いや、大方の吸血鬼だ。メイドに他の人にも薦めるように行ったのだろう。 諏訪子:なんだってそんな? 神奈子:自分が味わた苦味を、他の連中にも味わせたかったかも知れないね。 諏訪子:子様だなあいつ。 神奈子:はは。永遠に赤い幼き月っか?なかなか興味深い存在でもあるよ。 諏訪子:そう?ただの幼き吸血鬼に思えるけど。 神奈子:彼女自身はわがままな子供のようだもね。諏訪子、その能力の噂を聞いたことは? 諏訪子:ええっと、運命を操る、だっけ? 神奈子:その通り。今回このお茶にしても、無意識にその能力が使われてるかも知れない。 諏訪子:うん……どういう理由? 神奈子:福寿草の花言葉さ。 諏訪子:うん? 神奈子:永久の幸福、幸せを招く、祝福。 諏訪子:ええ?名前通り、縁起がいいものなんだ。 神奈子:後は、思い出というのはある。 諏訪子:思い出? 神奈子:それなりに早苗のことも気にかけている。そういうことかも知れないな。 諏訪子:うん?ああ、なるほど。早苗はやっぱり、まだ? 神奈子:面出には出さないことから、何とも言えないけれど。恐らくね。 諏訪子:外の世界……元の世界の思い出か? 神奈子:私たちの事情で、この世界で連れてきたが、それが本当にあの子の為だったのか? 諏訪子:やっぱりまた悩んでるんだ。 神奈子:自分の居場所を奪われる悲しみ、知らないわけじゃないだろう? 諏訪子:奪った女に言われると、いろんな気分だもんね。 神奈子:はは!まあ、私たちの場合はほとんど共同統治だったから問題ないけれど。 諏訪子:そうか。外の世界での早苗は何方ことになってるの? 神奈子:存在しなかったことになっているはずだ。 諏訪子:向こうで早苗を覚えている人は一人もいないっか。 神奈子:諏訪子は忘れさられていなかったからな。おかげで共同統治になったけれど。 諏訪子:私は皆が覚えていてくれたからね。だけど、そうか。早苗はもう戻れないんだ。 神奈子:この世界で幸せになってくれるなら、私はそれが一番だと思うんだがね。 諏訪子:そうだね。まあ、大丈夫だと思うよ。幻想郷は面白い所だもの。 神奈子:うん、確かに。私もそうは思っているけれど、多少は気になってしまってね。 諏訪子:へえ、神奈子は心配性だものな。 早苗:お待たせしました! 神奈子:ああ、お帰り、早苗。 諏訪子:って、散歩にそんなに山盛りの砂糖を持ってきたの? 早苗:はい!諏訪子様が大量にっとおっしゃったので、山盛りでお持ちしました。 諏訪子:ええ、へへへ……真面目だな、早苗ってば。 神奈子:大丈夫だよ、早苗。諏訪子は神様だからね。言ったことは責任をもって全部平らげるさ。 諏訪子:ケーロ!うう、分かったよ!私、全部、ちゃんと食べるよ! 早苗:ふんふん~甘いので、食べ終わったらちゃんと歯を磨くの!忘れないようにしてくださいね。 神奈子:うんうん、早苗はすっかりいいお母さんだな。 諏訪子:うう、子孫に子供扱いされるのも慣れてきたよ。ほほほ…… 神奈子:ははは!よしよぉし! 諏訪子:ううん!神奈子まで子供扱いするな! 早苗:ふんふん。それにしても、お二人は本当に仲良しですね。 神奈子:うん?ああ、付き合いが長いからね。 諏訪子:最初は敵だったんだけどね。 早苗:ええ。今のお二人の姿から、でも本気で争ったなんて信じられません。 諏訪子:ひどいもんだったんだよ。神奈子は信者ぐっとりだろう。 神奈子:諏訪子の祟り神っぷりの、なかなか凄かったじゃないか。 早苗:へえ?お話では聞いていますけど、お二人はどんな戦いをされたのですか? 諏訪子:うん……じゃあ、早苗にも話そうっか? 早苗:ええ!ぜひ! 諏訪子:うわ!乗り気だね! 早苗:今後この世界で生き抜くには、挨拶代わりにとにかくバトルを仕掛けなければならないので、参考にしたいと思います。 神奈子:あっ、うん……そうか? 諏訪子:これも幸せなのかな? 早苗:はい?どうかしましたか? 神奈子:いやいや、何でもないさ。こちらの話だよ。 諏訪子:まあ、滅多に見えない福寿草のお茶を飲みながら、滅多に語られない話をするのもまた縁にしっかな。 神奈子:うん。奇しくも私たちにとっての思い出話となるわけか。 早苗:へへ、よろしくお願いします。 神奈子:私が初めて諏訪子と会った時、諏訪子はそれはそれは禍々しい姿でな。 諏訪子:へえ? 神奈子:無数の眼球は赤く、土気色をした皮膚は爛れ、体の至る所から多くの触手を生やし、若い娘に殻につかせては牙のびっしり生えた口の中に…… 諏訪子:こら!ないよ!うそうそ!早苗も信じないで! 神奈子:おや、祟り神と言えば、これぐらい黒々してるほうがいいかなっと。 諏訪子:ああ、危ない。適当なこと語られる前に、私がちゃんとした史実を話さないと…… 早苗:ああ、ええっと、大丈夫ですよ、諏訪子様。私はし、信じてますが…… 諏訪子:えはは、神奈子に近寄りながら私を遠避けて見ないで! 神奈子:これが信仰の差だよ。諏訪子。 諏訪子:納得できない! 早苗:ふんふん、冗談です、諏訪子様。ごめんなさい。 神奈子:はは!まあ、ちゃんと語ろうが。 諏訪子:うんうん。あれはもうずっと昔、神話の時代の話でね。 神奈子:まだ日本が日本でさえなかった。全てが混沌とした頃のことだよ……