あなたは花の香りがした 白い部屋 その中で奏でる 子守唄はあまく 空気にほどけてゆく 手をつなぎ ふたり旅した日々 横顔を 見上げながら歩いた それももう おぼろげな輪郭 私があなたにできることは何 問う声はなぜか喉の奥に 今も残り続けている あなたは花の香りがした ゆっくりと 曖昧に微笑む その気配はあまく 空気にほどけてゆく やさしくて ひえた手のひらへと ぬくもりを伝えたくて ずっと ただ強く 握りしめていた 去りゆくあなたにできることはなに 問いかけは宙に浮いたままで 今も やさしくて ひえた手のひらから 少しずつ 失われるものを 受け止めて こぼれないようにと 去りゆくあなたにできることは何 問いかけは宙に浮いたままで 今も放り出されている 油のしみ込んだ つよい指先は 潔く今と過去とを区切ってしまえる その背中を見るたびに まるで責める声 目を覚ませ 早く醒ませと言われているよう こんな時は 世界に一人 取り残されたような気分になる 土を掘る両手は凍えた 神様はいないと知っていた 残された亡骸すがって 泣いて私いた私がそこにいる 熱の中 冷えた白昼夢に囚われて ためらうこともなく 進む人々は 私とは别の生き物なのだと思えば その背を見るたびに まるで責める声 目を覚ませ 早く醒ませと言われているよう こんな時は 世界の色が 急に剥がれて落ちて 崩れていく 土を掘る両手は震えた 神様はいないとしっていた 残された亡骸までもが 奪われたいくのはなぜだろう 音のない 褪せた白昼夢に囚われて 土を掘る両手は凍えた 神様はいないと知っていた 残された亡骸すがって 泣いて私いた私がそこにいる 熱の中 冷えた白昼梦に囚われて この身体に巡る血さえ温度を無くして 当たり前のようにまわる世界を憎んだ