声にならない声が 聞こえたような気がして うつむいた顔を上げる午前4時 本文のないメールに 添付された映像には 橋の上から見下ろす街並み 夜が明ける前 コントラストの強い色合いの画を見ながら 気づいていた もうそこにはあなたはいないと あなたが最後に見た景色の 欠片が胸へと突き刺さる 瞼の裏に焼き付いて 何度も何度も繰り返す 夢を見なくなって どれほど経つのだろうか 眠れているかさえ 曖昧な日々に ずっと忘れていた 空へ飛び立つ感覚を あなたが残した映像に見ている 湿った風とコンクリートの匂い 画では伝わらないすべてを 感じていた まるでそこに落ちて行くように 部屋を出て 高い階段を登る 少しでも 地上から離れて 空へ目指そうとした 屋上へ続くドアを開けて 両手で風を受け止まる 虚空に一歩を踏み出して あなたの軌跡を追いかける 私が最後に見る景色は 空から見下ろす眠る街 意識が途切れる瞬間に 飛ぶ夢を見られるだろうか