決まったか いえ、いろいろ見てるとなんか目移りしちゃっいます ごめんなさい 謝ることなんてないさ、なんでもいいんだからな 今日は、渚の気に入ったものをプレゼントするって 決めてんだから ありがとうございます こっち行ってみようぜ はい あ、朋也くん、あれ うん? だんご大家族のぬいぐるみです まだあったんだ プレゼント、あれがいいです 去年プレゼントしただろ? 去年のものとは色違いです 今年はあれをプレゼントしてほしいです マジ遠慮しなくてもいいんだぞ? 遠慮じゃありません。家にあるぬいぐるみは ずっとひとりで寂しそうでしたから 一緒にしてあげたいです。家族を作りたいんです 渚……うっ、冷てぇ ……雪 おお。……渚、誕生日おめでとう どうしたんですか、急に まぁな あけましておめでとう! おめでとう! おめでどうです おめでとうございます お母さん、お父さん 今年も朋也くん共々、よろしくです よろしくっす こちらこそ、よろしくお願いしますね やい小僧、新年だっつのに なにジュースなんかちびちび呑んでやがるんだ なんでって、俺まだ未成年だぜ? 娘と婚約しておいて、未成年だと? それは関係ねぇだろ お父さん、朋也くんにお酒を進めないでください そうですよ、秋生さん ちぃ、面白くもねぇ小僧だ。育て方を間違ちまったぜ だからあんたに育てられた覚えはねぇって 待てよ、渚は酒を呑める歳になったってわけか? はい、二十歳になりましたから なら、約束を果たしてもらうか はい? おまえ、約束したのだろ 二十歳になったら、俺と一緒に酒を呑むって そんな約束してないです したよ、忘れちまったのか? 夜な夜なひとりで呑んでる俺に言ったんだ… 呑める歳になったら、一緒に呑んであげるって… いつですか? そう、あれは…おまえが小学生の時だったかな そんなの覚えてないです あの日からずっと楽しみにしてきたのにな… 本当ですか、早苗さん 秋生さんがそう言うんですから、本当なんでしょう ずっと、楽しみに待っていてくれたんですか ああ、指折り数えて生きてきたさ! 絶対嘘だ なんか言ったか? いや、何も わたしがお付き合いできればよかったんですけど おまえはまったく呑めねぇからな これから先も俺は一人酒、か わかりました、呑んでみます 渚!? 朋也くん、心配しなくても大丈夫です でも、わたしに呑めるでしょうか… 呑めるさ、てめぇは俺の娘だ! わたしの娘でもありますが… 早苗さん… ああ物は試しだ、娘よ、まずは一献… では、いただきます おぅ、ぐいっといけぐいっと あ、鼻につんと来ました… いきなり日本酒なんて、やめておいた方がいいんじゃねぇか? いえ…せめて、一杯は呑みます、お父さんのためにも 渚…今ほど、おまえを産んでよかったと思った瞬間はないぞ 産んだのはあんたじゃねぇだろ… なんか言ったか? いえ、何も 大丈夫だ、匂いほどきつくねぇから、ぐいっと喉の奥に入れちまえ はい…いきます はぁ…呑みました ああ、いい呑みっぷりじゃねぇか そうですか…だったら、よかったです… ああ、最高の気分だ。つーわけで、もう一回見せてくれ あ…はい。では… 渚、そのへんでやめておいた方がいいですよ まだ平気です 今は平気でも、アルコールは時間をおいて回ってきますから 渚はもう、やめておきしょうね はい 秋生さんが寂しいなら、わたしが代わりに呑みます 渚、お猪口をわたしに 早苗、おまえはやめとけって いつも、寂しい思いをさせてしまっていたので… わたしも、一杯ぐらいなら平気です おまえ、無理すんなよ… 渚、おまえ顔が真っ赤だぞ? そうですか?…すごく火照ってます 大丈夫かよ はい、気分は悪くないです。でも、なんかぼーっとします ほら、言わんこっちゃない …なんだか、朋也くんが遠いです。もっと寄っていいですかっ 隣にいるだろうが そんなことないです、遠いですっ 近くなりました。えへへ 言っとくが、おまえ、酔ってるからな 酔ってなんかないです 酔ってる奴は皆そういうんだよ 朋也くん、暖かいです ラブラブですねっ ラブラブっつーか…これは違うでしょ… 朋也くん、どうして、否定するんですか 早苗さんの見てる前だぞ? お母さんがどうかしましたかっ 朋也くん、お母さんが気になりますかっ それはわたしも興味ありますねっ 朋也さんは、わたしを気にしてくれているんですかっ 早苗さんも酔ってるっすか!? おおっ、すげぇ修羅場だなっ 朋也くん、答えてください、気にしてるんですかっ 気にして、い… い…なんですかっ けっ、目が据わってる… どうなんですっ、朋也くんっ い…ない ぐす…わたし、気にしてもらえてなかったんですねっ ああ、いやぁ…早苗さん お母さんには、お父さんがいますっ そうだぞ、早苗。こんな娘の男なんて忘れちまえ いえ、気にしてもらってなくても わたしは朋也さんのこと、好きですので、忘れません てめぇ、殺す… でも、わたしが好きなのは、家族としてです 朋也さんは、渚のフィアンセさんですからねっ そうですよ 朋也くんは、わたしにとって、とても大事な人ですからね わたしには、秋生さんがいますもんね そうだぞ、早苗 朋也くんの肩に、頭を載せてもいいですか ああ、もちろん えへへ、よかったです ちっ、てめぇはよ… よく恥ずかしくもなく親の前でベタベタできるな 俺がしてるわけじゃねぇだろ しぃ、静かに 渚… 寝入ってしまったようですね 青春ですねっ もう…勘弁してくださいよ うれしいんです、渚のこんな姿を見られるなんて ねぇ、秋生さん ああ…そうだな…こいつが渚を不幸にしてたら 今頃、モロッコに飛ばされてたさ モロッコ、なぜ!? 大丈夫ですよ。渚は朋也さんと一緒に居るだけで幸せなんですから 不幸になんて、絶対ならないです そうかよ… 朋也さんは、どうですか え? 朋也さんは、渚と一緒に居られて、幸せですか …もちろん。俺からこいつのことを好きになって 付き合い始めたんだし… ずっと、一緒に居られたら…本当にそれだけで…いいです やっぱり、渚は幸せ者ですね すぅ…