嫁ぐなら高貴な人へ 父、入道に言われ育った その夢がかなわぬときは 海にでも身を投げるがいいと 高麗の紙 くるみ色の文 綺麗な文字に気後れがして 行間に心の深さ 量りきれずに拒み通した 十三夜の月 月毛の駒で雲間を駆けて 思う誰かは別にいるのに 海に淡路島 私の琴が聴きたいと言う 風の細紐 弦を鳴らした 年代わり帝は目を病み 物の怪に悩む大后 光る君 無実の罪を 許されて帰京が決まる 藻塩焼く煙のように 離れても風に溶け合う 形見にとくださる琴の 調弦が緩まる前に… 澄み渡る音色 あなたの方へ寝返る波に この身を投げて沈みましょうか 旅の狩衣 涙を濡れた互いの服を 取り換えましょう また逢う日まで