花の宴 酔いにまかせて 弘徽殿を散歩していると きれぎれに「朧月夜…」と 歌う声 華やかな影 名は明かさず 互いの扇 取り換えて約束にした 政敵の六の君だと あとで知りなお惹かれてく 月の光を隠す雲 輪郭がみな溶けていく 私の生きる道さえも 妖しい影に包まれる 藤壺は顔を背けて 拒みきり出家なさった 東宮を守り抜くため ご自分の愛を投げ捨て その逆に朧月夜は 危なげな恋を貫く 帝へと参内ののちも 情熱は燃え立つばかり 彼女の父の右大臣 密会の部屋に急に来て 袖に絡んだ私の帯と 恋歌書いた紙の海を見た 月の光を隠す雲 弘徽殿の女御はそれを聞き 帝に謀反企てたと 私に罪をなすりつけた