魂が身体を離れ 空を舞い雲間を滑る 逆立った髪は墨色 星空を塗りつぶしていく 光る君 一目見ようと 祭りの日 混みあう車 正妻の葵の君に 割り込まれた壊れた車 東宮妃だった私に なんという哀しい恥辱 めらめらと心の奥に 嫉妬の火 飛び火していく 臨月の葵が伏せる 部屋の隅 宙に浮かんで 憎しみの化身となって まなざしも般若に変わる 泣かないで きっとよくなる 囁かれ微笑む葵 ご祈祷をゆるめてください 苦しくて息ができない 恋しさにさまよう心 その指でつなぎとめてね 途中から声が変わって 誰だ!って突き放された 夕霧という男の子 産んだ後 葵は死んだ 冷酷で高飛車だった 妻なのに源氏は泣いた 悪い夢みていたように 汗ばんで目覚めた私 護摩に焚く芥子の香りが 服や髪しみこんでいた