落ち葉小道 悴んだ指先 白み始める吐息 虫たちの音 囁き出す頃に 辿り着いた景色 諦めるには早過ぎないかと 引き止める声に誘われ 形を変えて 返り咲いた日が まるで昨日の様に思える 黄昏空 きらきらと滲ます湖に 遠い想い出を そっと溶かして 木枯らしの中 肩を竦める わたしは ひとりで  冬の足音 聞いていました 岸の草に 静かに腰下ろし 少し 想いに耽る 時の中で 虚ろな正しさは すべて 押し遣られる 愛が薄れて やがて忘れられ 幻想の国へ旅立つ 新たな夜明け 待ち詫びる夢が 夜毎に胸に諦め付けて来る 月明かりが ゆらゆらと揺らめく湖に 在りし微笑みを そっと浮かべて 宵闇の中 頬を震わせ わたしは ひとりで  冬の足音 聞いていました 現人の世の移ろいは 表もあれば 裏もある 栄える富のその影に 寂れる神の嘆きあり ああ 秋風が誘うは涙時雨 野辺に迫るは冬景色 雪霜に堪えて 春を夢見る 咲かせてみせます 諏訪の花 暁空 ちらちらと散らばる湖 強い眼差しで じっと見据えて 朝霧の中 瞳を閉じる わたしは ひとりで  冬の足音 聞いていました