夜想楽 「夏への四つのプレリユウド」から 若叶には目にしむ风がさわさわと薫つてゐたが 巡るおもひに何かひそんでゐたのだろうか? 少女は仆にうたつてきかせた ――或る真冬の夕ぐれに それは 雪つむ野路のうすあかりでした わたしの胸からよろこびが 谁かのしらない唇に盗まれました わたしはそれから 慰さめをばかり 渇いた口に呼ぶうたをうたつて すごしてをりますと―― 真冬の夕べの雪あかりに しのんで行ったのは谁の心か? そうして少女のあこがれ痛い予覚に 盗まれたのは? --少女よ それを仆に语っておくれ