月光蝶 「あの高さはどれほどでしょう?」 と貴方は言っていた 幼いころ お月さまの下でキラキラの満ち欠け辿って遊んだ 遣らずの片時雨 紫陽花と琥珀色した月は汀で踊る それぞれを讃えながら 一つ棘に触れるたび 消えていく ひとつもこぼさぬよう てのひらですくってためた 月はなくなっていた さよなら 白面に照らされた 指先にとまる 番の蝶 キラキラと光る雪は 貴方のような気がして 息が出来なくなった 指に絡む蜘蛛の糸 私…私の顔が無い… のぼっていく 消えていく しゃぼん玉 壊さぬように 大切に大切にしていたのに 私はここにいるよ ねぇ 神様 湖面の波紋にのり ゆれながら… 綺麗に飾った蝶はガラス玉 いつからだろう 何も無い私 蝶が飛べたのは いつもいつも 貴方がいてくれたから さよなら 物言わぬ者たちよ きっとずっとそうなのでしょう キラキラと光る 月は ああ 雪色の蝶に溶け 涙になった