在る者が問う 「愛し人の傷を癒せる魔法使いはいないか?」と。 在る者は云う 「最果てから東へ行けば緋色の賢者が居る」 最期の希望と縋る腕、払うことなく救う手 安寧の地と謳われ人は集い、やがて緋の街は生まれた 進みゆく現世で奇跡が留まる場所 自由は鮮やかにはためいて そうさ 来る者は拒まずに、去る者は追わずに贈ろう餞を また一人 導かれ辿り着く何を求め 想うのだろう 賢者は言った 「惑えばこそ道は開ける。意思を示すのならば」 震える指 焼け付く痛み、熱を帯び流れ落ちる 立ち上る湯気に映るのは怯えるだけの瞳 形のない思い出が歪む 今は絶望にまみれても誰しもに与えられた祝福がある また一つ開く花 今度はとんな形で色づくだろう 呼び声 夢境の水面へと—— 時を重ね癒えてゆく安らぎと慈愛の中で 触れたはずの温もりに指を伸ばした 独りで泣いているのは誰? 嗚呼 足りない欠片を繋ぎ合わせる日々に かけがえない光が射し込む 街では今日も高らかに自由の歌が響く 最果てまで風が運ぶだろう そうさ 来る者は拒まずに、去る者は追わずに贈ろう餞を また一人 導かれ辿り着く何を求め 巡り逢うだろう? さあ、始まりの鐘を鳴らそう 宿星を抱く君に幸あれ!