玄関先に座って、泣きべそをかいていた。 逃げ出そうにも帰る場所はここしかない。 いつの間にか思い込んでいた、当たり前というまぼろし。 違うことに戸惑ってしまって、泣いていたんだね。 どうしてそうなったのかは教えてもらえないから、 悪いのは自分なんだろうと、責めるしかなかった十月。 見えなくとも、見えなくとも、残っているものがある。 この季節の空にだけ蘇る記憶。 どうせなら消してしまいたかったそれも、体の中を流れている。 今は生きているわけだから、要らないものじゃないのさ。 今は生きているわけだから、要らないものじゃないのさ。 陽の当たらない六畳一間は、ただの檻さ。 夜寝ていても悪い空気を飲んでいるみたいで。 教えてもらったのは、人は順番を決めたがるってこと。 後回しにするくらいなら触れなければいいのに。 どうしてそうなったのかは教えてもらえないから、 期待するのはもうやめようと、扉を閉めた十月。 離れても、離れても、残っているものがある。 この季節の空にだけ蘇る記憶。 影を作ってしまうだけのそれも、体の中を流れている。 今は生きているわけだから、要らないものじゃないのさ。 おめでとうを歌う。消えぬように歌う。 おめでとうを歌う。消えぬように歌う... どうせなら消してしまいたかったそれも、体の中を流れている。 今は生きているわけだから、要らないものじゃないのさ。 今は生きているわけだから、要らないものじゃないのさ。 見えなくとも、見えなくとも。 離れても、離れても。 この季節の空にだけ蘇る記憶。 今は生きているわけだから、要らないものじゃないのさ。 今は生きているわけだから、要らないものじゃないのさ。