ちょびひげ:さてさて、明くる日、夏目殿はニャンコ先生を伴い 振ってはいた縁談を断るため、件の道祖神へと向かったのであります 夏目:ああ… ニャンコ先生:ところで報酬の団子だが、餡五個、醤油五個にしてもらおうか 夏目:ああ…やっぱり気が重い ニャンコ先生:その小妖、泣くぞ 大泣きするぞ~ 夏目:ああ…人事だと思って ニャンコ先生:おう!そうだ!その小妖、親子ともども食ってやろうか? そうすれば一気に解決するぞ ニャンコ先生:どぅあああ!ふん!冗談の通じんやつだ 口利きしてやる代わりに団子忘れんなよ 夏目:わかってるよ 痛て! 柿? まただ… あれ?先生? どこ行った? 小妖:放せ!放せこの白豚! ニャンコ先生:こいつ食っていいか? 夏目:だめだよ先生 お前だな、今までさんざん悪戯を仕掛けてきたのは 小妖:ふん!食うなら食ってみろ 夏目:なんで俺を狙ってくるんだ? 何か恨みでもあるのか? 小妖:はやく食えよ ニャンコ先生:んじゃ、いただきまーす! 小妖:うぇえええ ちょびひげ:ニャンコ先生がペロリと舐めあげると、今まで強がっていた小妖は打って変わって、ペラペラ喋り出したのであります 名前はチョウジ、カタバミとは幼馴染で、幼い頃将来を誓い合った仲らしいとまでは、わかったのでありました ニャンコ先生:なるほど。さては夏目に横恋慕されたと思って、色々と仕掛けてきたのだな チョウジ:うるせえよ うぇえええ… そ、そうだそうだ ニャンコ先生:なるほど この件の落とし所が大体見えてきたぞ 夏目:んええ? ニャンコ先生:さてどうしたものか おう!おあつらえ向きに誰か来るぞ! 中級A:ああ!これはこれは、夏目様に豚…舞台映えする斑様? 中級B:豚斑、ぶたま? ニャンコ先生:おいお前ら、何言ってんだ。お前らに手伝ってほしいことがある 中級A:はあ…何でしょうか 中級B:しょうか ちょびひげ:さてさて、一度八ツ原に集まり、中級どもを巻き込んで何やら計画準備に取り掛かったのであります 中級A:斑様、角はこのくらいでよろしいでしょうか 折れた鹿の角を削って作ってみましたがん ニャンコ先生:うんうん、いい感じだ うむ、お前は眉毛が情けなくていけない、この墨で勇ましくするんだな 中級A:えぁ、はあはあ 中級B:はあはあ ニャンコ先生:夏目、お前も準備するんだ とりあえずこの牙をつけろ 夏目:勘弁してくれ 本当にこんなことしなきゃならないのか ニャンコ先生:ああ、あの娘を傷つけずに諦めされるのにはこの手しかない、キリン! 夏目:そうかな 先生、何か面白がってない? うわーっ ヒノエ:こんなところで何面白そうなことしてんだい?夏目 夏目:放せ、放してくれヒノエ! ヒノエ:うんっふん、ふんふんふんふん。可愛いやつだね~ ニャンコ先生:おお、ちょうどいい所に現われた ヒノエ、ちょっと手伝ってくれ ヒノエ:ん?なんだい~? 夏目:あ…やめろ、やめろよ ヒノエ:ほ~ら~、じっとしてないと眉毛が曲がっちまうじゃないか 夏目:か、勘弁してくれー ヒノエ:この筆じゃ役者不足だね こっちのハゲでやろうかね~黛をたっぷりつけて…と、 夏目:… ヒノエ:いいねいいね~将器様みたいに勇ましいよ~ さてと、髪はこの鬢付け油で逆立てるかねぇ 夏目:うわっ…ヒノエ:つん、つん、つんと~ ニャンコ先生:おい、チョウジ、お前も手筈わかってるな さっき言った通りやるんだぞ チョウジ:わかってるよ ちょびひげ:その日の夕刻のこと 何やら恐ろしげな扮装をした夏目殿たちが道祖神のところにやってまいります ニャンコ先生:ほらほら、夏目 夏目:う、うん カタバミ、いるかー ニャンコ先生:ほら、もっと腹から声出せ 夏目:カタバミ!いるか! 獲物をとってきたぞ カタバミ:あれ?夏目様!? ちょびひげ:カタバミ親子が出てまいりますと、夕闇の中に立つ夏目殿は、いつもの優しげな風情と打って変わって 眉毛は黒々 髪はつんつん 牙まで生えてそれはそれは恐ろしげに見えたのであります その右左には、これまた恐ろしげな中級妖怪が赤鬼、青鬼と言った風情で控えているのでありました カタバミ:ななななな夏目様、いいい一体!? ニャンコ先生:こいつを煮て食うか 夏目:こいつを煮て食うか、焼いて食うか、どっちがよいか ちょびひげ:カタバミが目を凝らしますと 夏目殿はその手に、紙紐でキリキリ縛り上げたチョウジをぶら下げていたのであります カタバミ:チョウジ! チョウジ:放せ!放しやがれ! 中級A:生が一番じゃー 中級B:一番じゃー カタバミ:ひ、人というのは、妖かし物を食べるのでありますか 夏目:あ、ああ… 中級A:おう~食わんでか、なあ、相棒? 中級B:おう、食わん、食わん 中級A:いや食うんだよ カタバミ:ははー!恐ろしいや恐ろしいや、お父さま~ ニャンコ先生:祝言の引き出物に 夏目:祝言の引き出物にとってきたのだぞ カタバミ、お前のためにな! カタバミ:ああ!お父さま!お父さま! イタドリ:そ、そのような恐ろしげなものには、とても娘はやれませぬ 夏目:なんだと 約束を破るのか お前たち、まとめて食ってしまうぞ 中級A&B:食っちまうぞ~ カタバミ:あーー! チョウジ:はあ! えい!えい! 夏目:いた!いた!いたたたた! チョウジ:えい!えい! 中級A:ああ痛い!痛い痛い…これたまえらん! 中級B:たまらーん! ちょびひげ:その時でございます やおらチョウジが紙紐を引き千切り、隠し持った栗のイラで夏目殿をつ、突いたのであります さらに、銃を無尽に飛び回り、次々と中級どももつ、突いたのでありました 夏目&中級:うわぁあああ… チョウジ:どうだ?まいたか? カタバミ:チョウジ!人というのものが、あのような魔物だと思わなんだ イタドリ:チョウジ、助かったぞ カタバミ:チョウジ!ありがとう! チョウジ:なんのなんの 惚れた女を守れんようでは男とは言えんからな カタバミ:あっ、チョウジ?今、なんと? チョウジ:二度も言わせんなよ カタバミ:チョウジ! ちょびひげ:その夜、夏目殿の部屋で、ニャンコ先生は団子十個を前に、ご満悦の様子でありました ニャンコ先生:ど、れ、に、し、よ、う、か、な はい、これ! 夏目:あれでよかったのかな。なんだか後ろめたくて ニャンコ先生:ん…気にすんな、気にすんな 夏目:あのカタバミって子、傷ついたんじゃないかな ニャンコ先生:うむ、うむ…よっ!色男! 夏目:うるさい (ノックの音) ちょびひげ:窓を開けてやりますと、そこには、チョウジがカタバミと連れ立っておったのであります 夏目:あ、あ…実は、あれは… カタバミ:チョウジからすべて聞きました 夏目様がわたくしたちのためにあのような骨折りをしてくださったとのこと! チョウジ:実は夏目様にもう一つお願いがあって来たんだ 夏目:ええ? (宴のざわめき) ちょびひげ:後日、八ツ原に界隈の妖怪たちが集まって、結婚式が執り行われたのであります 新郎新婦はカタバミとチョウジ 仲人はなんと… 夏目:ええ、ほ、本日はお日柄もよろしく… 中級A:や~ 中級B:びょう~ ヒノエ:いい男だね~ 夏目:ええ、チョウジ君、カタバミさん、ご両人と俺、あいいえ、わたくしとの出会いは… 先生、助けてくれよ ニャンコ先生:ん?良きに計らえ!…っえっにゃ 夏目:おおぁ!先生!何飲んでんだよ! ニャンコ先生:んひひひひひ、お神酒じゃお神酒じゃ、はは、ぬへへへへー 夏目:ええと、ん、その、お二人はお似合いの良いカップルだと思います 心から言いたいです。おめでとう! チョウジ&カタバミ:ありがとうございます!夏目様!ありがとうございます! (歓声) ちょびひげ:尻に敷かれそうでありますな~ さてさて、雨降って地固まると申しますが、 なんやかんやあったのでございますが、めでたしめでたしの結末となったのでありました カタバミの恋の一編、これにてお終いであります