「さあ、残さず食べなさい」 腐臭漂う背徳の 今日もはじまる最後の 身の毛もよだつ料理の ひとり食い漁る女の 彼女の名前はバニカ・コンチータ かつてこの世の美食を極めた その果てに彼女が求めたのは 究極にして至高の悪食(あくじき) 敬い称えよ われらが偉大なコンチータ この世界の食物は 全てがあなたの為にある 食らい尽せこの世のすべて 胃袋にはまだまだ空きがある 青白く輝く猛毒 メインディッシュのスパイスに最適 骨の髄までしゃぶり尽せ 足りなければ皿にもかぶりつけ 舌先を駆け巡る至福 晩餐はまだまだ終わらない 今年に入って15人目の お抱えコックがこう言ってきた 「そろそろお暇を貰えませんか?」 まったく使えぬ奴らばかりね 敬い称えよ われらが偉大なコンチータ 裏切り者には 報いを受けていただきましょう 食らい尽せこの世のすべて 今日のメニューは特別製なの 青白く輝く毛髪 オードブルのサラダに丁度いい 骨の髄までしゃぶり尽せ 足りなければ「おかわり」すればいい ちょっとそこの召使さん あなたはどんな味がするかしら? いつしか館はもぬけのからに 何にもないし 誰ももういない それでも彼女は求め続けた 究極にして至高の悪食(あくじき) 「残したら、怒られちゃうもの」 食らい尽せこの世のすべて 彼女は自らの右手を見て そして静かにほほ笑んだ 「マダ タベルモノ アルジャナイ」 コンチータの最後の悪食(あくじき) 食材はそう 彼女自身 食を極めたその身体の 味を知るものはすでにいない